『トルパン』@東京国際映画祭2008
東京国際映画祭で、再び、コンペティション部門上映作品『トルパン』を観てきました。
カザフスタンのステップ地帯。
そこで、姉夫婦の家庭に居候するアサは、
兵役も終えたので、早くお嫁さんをもらって、羊飼いになりたい。
とはいえ、毎日砂嵐が吹き荒れるこの一帯にご近所さんはおらず、
ようやくみつけた花嫁候補トルパンのいる家庭までは1日を要する距離。
みやげ物をもって、水平の制服でばっちり決めて求婚に訪れるが、
「耳が大きすぎる」といって断られる。
友人のボーニは、「こんな砂漠を出て都会へ行こう!」としきりに誘うが、
この地で美しいユルト(テントのような形状のこの地方の住居)を持ち、
ラクダや羊を飼って豊かに暮らしたい、というのがアサの夢。
そのためにはまず妻を娶らねばならないのだが・・・
ステップ地帯での厳しい生活、しかしそれを厭わない人々の暮らし、
そんな様子がドキュメンタリータッチで描かれますが、
人に関しては全て、演出、演技なのだそう。
(アサの甥っ子、一番下のチビさんは例外。この子、ものすごぉーく、可愛かった!)
もちろん、自然や動物の出演シーンに演出ができるはずもなく、
想像を絶する忍耐力の果てに、映像となったものだそうです。
その忍耐期間、なんと4年!
セリフを妨害するほどの砂嵐や、羊の死産の問題など、
ままならないその地での暮らし、しかし、それを苦にするどころか、
愛してやまないアサやその姉夫婦。
(「ここ以外のどこで生きていけるっていうんだ!」)
砂嵐の吹き荒れるステップでも、ユルトの内側は穏やかな空気に満ちていて、
ケンカもするけれど温かい家庭生活が営まれている。
姉夫婦の家庭で、時折居心地の悪さを覚えるアサは、
早く自分自身の家庭を持ちたいと思うのですが、
日に日に想いを募らせるものの手に入らない「トルパン」は、
アサにとっての「砂漠での夢の暮らし」そのもののようです。
とにかく、すごく、愛のある映画でした。
それは、アサのこの地への愛、サマル(アサの姉)のアサや家族への愛、
オンダス(サマルの夫)の家族・家畜への愛、そして、アサのトルパンへの愛。
何より、監督のカザフスタンへの愛がじわじわと染み入るように感じられる映画です。
わたしが映画祭で観る映画を選ぶ基準は、
まず日時の都合がつくこと。(土日か平日なら夜7時以降)
そして、普段なら観ないであろう作品、
もしかしたら今後日本で公開されないかも、という匂いのする作品、
そんな基準です。
この『トルパン』も、もちろんそういう基準で観ることに決めたのですが、
観終わってみると、もっとたくさんの人に観てもらいたいと感じました。
ぜひぜひ、日本で公開されることを願います。
わたしの感想よりずっとわかりやすいレビューです。
by chiemhana
| 2008-10-25 13:22
| 映画