『東京奇譚集』村上春樹
東京奇譚集
村上 春樹 / 新潮社
村上春樹の最新作、さっそく飛びつきました。
タイトルの通り、奇妙な出来事をテーマに描かれた五つの短編が収められています。
村上春樹作品の流れのなかで見れば、同一のテーマで書かれた短編集ということで、『神のこどもたちはみな踊る』と同じラインに並べられます。
と同時に、この作品でもしかしたら、この作家は新たなステージに立ったのではないか、とわたしには思えます。
村上春樹的ではあるものの、村上春樹臭さのようなものがとても薄く感じられたからです。
他の作品はとても村上春樹臭いのです。
全然違う人物を描いていながら、どうしてもそこに作者の影が見え隠れする、ような。
それは、『神のこどもたちはみな踊る』でも感じられたものでした。
ところがこの『東京奇譚集』では、主人公の男が小説家であってさえ、作家の影は薄いのです。
まぁ、「どこであれそれが見つかりそうな場所で」や「品川猿」に登場する特殊な職業と奇怪な現象は、非常に村上春樹的ではあるのですが。
わたしが好きだったのは「偶然の旅人」。
読み出したら止まりませんでした。強く静かに心を揺さぶられます。
そして「ハナレイ・ベイ」。
主人公のサチは息子を亡くしたのにも関わらず、意外に淡々と進む物語。
しかし終盤描かれる出来事に背筋の凍る思いをし、さらに胸を締め付けられるような悲しみを共有し、ラストは爽快感まで味わうことができる、すごい!の一言。
「日々移動する腎臓のかたちをした石」も好きな作品です。
最近はこの手の情報にもとても疎いのですが、村上春樹氏はまた長編を手がけているのでしょうか。
作品の質には満足でしたが、どうも“前菜”的で、ちょっと物足りなかったので、早く次の新作が読みたいものです。
村上 春樹 / 新潮社
村上春樹の最新作、さっそく飛びつきました。
タイトルの通り、奇妙な出来事をテーマに描かれた五つの短編が収められています。
村上春樹作品の流れのなかで見れば、同一のテーマで書かれた短編集ということで、『神のこどもたちはみな踊る』と同じラインに並べられます。
と同時に、この作品でもしかしたら、この作家は新たなステージに立ったのではないか、とわたしには思えます。
村上春樹的ではあるものの、村上春樹臭さのようなものがとても薄く感じられたからです。
他の作品はとても村上春樹臭いのです。
全然違う人物を描いていながら、どうしてもそこに作者の影が見え隠れする、ような。
それは、『神のこどもたちはみな踊る』でも感じられたものでした。
ところがこの『東京奇譚集』では、主人公の男が小説家であってさえ、作家の影は薄いのです。
まぁ、「どこであれそれが見つかりそうな場所で」や「品川猿」に登場する特殊な職業と奇怪な現象は、非常に村上春樹的ではあるのですが。
わたしが好きだったのは「偶然の旅人」。
読み出したら止まりませんでした。強く静かに心を揺さぶられます。
そして「ハナレイ・ベイ」。
主人公のサチは息子を亡くしたのにも関わらず、意外に淡々と進む物語。
しかし終盤描かれる出来事に背筋の凍る思いをし、さらに胸を締め付けられるような悲しみを共有し、ラストは爽快感まで味わうことができる、すごい!の一言。
「日々移動する腎臓のかたちをした石」も好きな作品です。
最近はこの手の情報にもとても疎いのですが、村上春樹氏はまた長編を手がけているのでしょうか。
作品の質には満足でしたが、どうも“前菜”的で、ちょっと物足りなかったので、早く次の新作が読みたいものです。
by chiemhana
| 2005-09-26 20:47
| 本