本や映画、食べ物、ヨガのことなどなど・・・心にピンときた、いろいろのものについて思ったことを書いています
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『白いカラス』

映画「白いカラス」

強い姿勢を貫いて大学内で地位を築いてきたシルク。それゆえ敵も多い彼が、講義に一度も顔を出さない生徒を「彼らは幽霊(スプーク)か?」と言ったのが運の尽き。「スプーク」には俗語で「黒人」の意味があり、たまたまその学生たちが黒人だったため、人種差別をしたとして大学を追われることになってしまいます。
そのショックゆえに妻をも失ってしまうシルク。
老いて、職も地位も妻も失った彼は、それでも前向きに強く生きている。
そんな彼に触発されて、森の奥での隠遁生活から、社会的な生活を取り戻すようになった作家ネイサン。
映画はシルクの視点と、ネイサンの視点、二方向から描かれます。
ある時、シルクはフォーニアをいう若い女性と出会い、恋に落ちます。
彼女は、今もって癒えない深い傷を心に負っています。
大きな年齢差や、社会的地位の差から、批判を受ける二人ですが、互いに境遇を労わり合い、支えあって、深く愛し合うようになります。

実はシルクは白い肌を持って生まれた黒人。
人種差別の疑いがかけられたとき、真実を打ち明けていれば、全てを失わずに済んだわけですが、彼が長年そのことを隠して生きてきたのには、わけがあります。
若い頃に愛し合った女性。彼女は、彼が本当は黒人だということを知り、離れていってしまう。
シルクは自分の出自を明かさないことを堅く決心するのです。
彼はまた、フォーニアに、そのかつての恋人の姿を重ねてもいます。
そして、自分の負った傷(若い頃の傷、大学を追われ妻を失った傷)によって、フォーニアの傷(幼い頃は継父からの性的虐待を、結婚後は夫から家庭内暴力を受け、二人の子供を事故で亡くすという悲惨な過去)も理解するのです。
そして、二人を死に追いやってしまう、フォーニアの元夫。
彼もまた癒えない傷を負っています。
ベトナム戦争で受けた傷、それによってフォーニアを傷つけてしまうのですが、それゆえ妻を失ってしまい再び傷つきます。そして、フォーニアと同じように、子供を失って傷ついている。

彼らはただ不運なだけではありません。
社会的な歪みから、傷を負っている。
一見、特異なケースのように見えますが、彼らに関わることは、わたしたちのすぐ身近にも溢れています。
それを、当事者だけではなく、作家ネイサンの視点を借りることによって、誰かに肩入れするのではなく、冷静にみせつける。

静かで地味ですが、とてもよく描いている映画だと思いました。
未だ断ち切れない悪循環の鎖。
ある意味では、絶望的な話でもあります。


余談ですが、ニコール・キッドマン、かっこいいですよね。
彼女もヨガ愛好者のはず。
細いのに、締まった腕と背中が美しかったです。
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by chiemhana | 2005-06-27 18:16 | 映画

『ウィスキー』

渋谷CINE AMUSEで現在公開中。
www.bitter.co.jp/whisky

南米はウルグアイの映画。
(恥ずかしながら、小松菜亭はウルグアイがどこにあるのか存じませんでした。)
小さな靴下工場を営むハコボ。
母の墓の建立式にブラジルに住む弟のエルマンをよびよせます。
二人は久々に再会するようす。
見栄があるのか、ハコボは自分の工場に長年勤めるマルタという地味で勤勉な女性に、自分の妻役を依頼します。
終始無表情なハコボとマルタ。
代わり映えのしない繰り返しの毎日に訪れた、エルマン(=「非日常」)。
それでも変わらないハコボと、変化を楽しむマルタ。
物語の途中で終わってしまったような印象のエンディング。
でもそれでわたしたちは、もっと深い物語を楽しむことができます。

ハコボの工場のように地味なストーリー展開。
でも、その中に突然生まれる小さなギャップや、変化を楽しむマルタと元に戻そうとするハコボの綱引きのようなやりとり、仏頂面で突然意外なほどのホスピタリティを発揮するハコボ、などなど、クスクス笑いが止まりません。

マルタの声とイントネーションが愛らしく、3人が度々口にするブラジルも気になります。

遠いようで、なぜか親しみを感じる、楽しく、そしてちょっと切ない映画です。

ちなみに、東京国際映画祭にてグランプリ・主演女優賞を、カンヌ映画祭にてオリジナル視点賞・国際批評家連盟賞を受賞だそうです。

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by chiemhana | 2005-05-31 09:59 | 映画

『ミツバチのささやき』

映画『ミツバチのささやき』のこと。

島本理生の『ナラタージュ』がきっかけで、思い出しました。
10年位前から、「みたい映画リスト」に加わっていたこの映画のことを。

スペイン、ビクトル・エリセ監督、1973年の作品。
アナという幼い少女の心の中にわいた空想の世界。
それが育っていく様子。
そして現実に引き戻されるまで。
スペイン内乱の影響が描かれているそうですが、そこのところはよくわかりませんでした。
こういう世界を持っていたときが、あったな、という切ない気持ち。
そして何と言ってもアナ役アナ・トレントの切ないほどの美しさ。
「美しい」という言葉でも、少しそぐわないような気がします。
中性的な雰囲気もあるのです。
作品全体としては、台詞も少なく静かで、物語もそれほど起伏に富んでいません。(ヤマもオチもあってないような・・・)
しかしシーンの一つ一つが絵画のように美しく、見終わった後に長い余韻が残ります。
「きっとこうして成長していくのだろう」と自然に思え、物語の続きはそれほど気になりません。
ただ、この世界にもっと留まっていたいと感じました。

近い日にやはり『ナラタージュ』に登場、同監督の『エル・スール』もみました。こちらもやはり美しい映画でしたが、『ミツバチのささやき』の方が、アナ・トレントの魅力とあわせ、印象がより深かったように思われます。
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by chiemhana | 2005-05-27 09:21 | 映画